PATAPIが売買比率を集計しているFX各社は、利用者の多い国や地域、レバレッジの傾向、扱う商品の幅がそれぞれ異なり、同じ通貨ペアでも比率の表れ方が変わってきます。 この記事では、各社がどんな顔ぶれの利用者を抱え、どんな性格のデータなのかを一社ずつ詳しく見ていきます。(社ごとに比率が違う理由そのものは別記事で扱います。)
現在の各ペアの偏り
まずは各ペアが今どちらに傾いているかを、偏りの大きい順に俯瞰しておくと、後の各社解説が読みやすくなります。
上の一覧はPATAPIが集計対象とする各社のデータを横断してならしたものです。以下では、その内訳となる各社が「どんな利用者層で、どんなレバレッジ・商品傾向を持つのか」を順に見ていきます。
IG
英国発の世界最大級のCFD業者で、欧州・豪州など先進国の幅広い層が利用し、規制下でレバレッジは比較的抑えめです。
- 利用者層:英国を中心に欧州・豪州など先進国の個人が多く、利用者数が非常に多いため、特定の偏りがならされやすい傾向があります。
- レバレッジ:FCAやASICなど規制の厳しい地域が中心で、個人向けのレバレッジは低めです。高レバを志向する層というより、規制された環境のトレーダーが母体です。
- 扱う商品:為替に加えて株価指数・商品(金や原油など)・暗号資産・個別株まで対象が広く、幅広い銘柄でデータが取れます。
- 比率の特徴:ポジションの「件数」で長短を数えるため、1人が大きく張っても小さく張っても1カウントです。直近1時間・当日・週・月と複数の期間で見られます。

OANDA
米国や日本など複数地域の個人が利用し、保有ポジションだけでなく注文の価格分布まで見られるのが最大の特色です。
- 利用者層:米国法人を中心に、英国・シンガポール・豪州・カナダ・日本など複数地域の個人を含みます。アルゴリズムやAPIを使う層にも支持されてきました。
- レバレッジ:米国をはじめ規制の厳しい地域が中心で、レバレッジは低めです。
- 扱う商品:主要な為替に金などを加えた十数銘柄に絞られています。
- 比率の特徴:建玉の偏りに加え、指値・逆指値の注文が価格帯ごとにどう溜まっているかが見えます。ストップや指値が集まりやすい価格の手がかりになります。
FOREX.com
米系の大手の顧客が中心で、銘柄ごとの長短をリアルタイムに映すシンプルなタイプです。
- 利用者層:米国を中心とした個人(StoneX系)が母体です。
- レバレッジ:米国など規制の厳しい地域が中心で、レバレッジは低めです。
- 扱う商品:主要な為替を中心に各種CFDを扱います。
- 比率の特徴:銘柄ごとの買い・売りポジションの比率を、数量の割合とあわせてリアルタイムに表示します。
Capital.com
2016年設立の比較的新しい多資産CFD業者で、アプリ起点の新しめの層が多く、暗号資産を含む幅広い商品が特徴です。
- 利用者層:欧州・中東・アジアなど50か国超の個人が利用します(米国は対象外)。アプリ中心で、トレードを始めて間もない層も多いとされます。
- レバレッジ:規制地域では個人のレバレッジは低めで、オフショア法人ではやや高めです。1件ごとにレバレッジを手動で調整できる仕組みもあります。
- 扱う商品:為替・株価指数・商品・個別株・ETF・暗号資産まで数千銘柄を扱い、暗号資産CFDが充実しています(英国の個人は対象外)。新規上場銘柄の追加が速いのも特徴です。
- 比率の特徴:銘柄ごとに、顧客のうち買い・売りがそれぞれどの程度かを比率で示します。

Pepperstone
豪州発・英豪拠点の社で、為替を主戦場とするアクティブなトレーダーが多く、地域によってレバレッジの幅が大きく異なります。
- 利用者層:豪州・英国・欧州・中東に加え、オフショア法人経由でアジア・アフリカなど。MT4/MT5/cTrader/TradingViewを使う、取引頻度の高い層が中心です。
- レバレッジ:先進国の規制法人では個人は低めですが、オフショア法人(バハマ・ケニアなど)やプロ口座では大幅に高くなります。「どの地域の法人か」で水準が大きく変わる社です。
- 扱う商品:為替を中心に、指数・商品・暗号資産・株式まで千数百銘柄を扱います。
- 比率の特徴:ツール群(Smart Trader Tools)を通じてセンチメントを確認できますが、このデータ自体はFX Blueの集計を利用しています。
Dukascopy
スイス系の社で、一般の個人だけでなく運用者やヘッジファンドも含み、トレーダーの種類を分けて見られるのが独特です。
- 利用者層:欧州・スイス系。一般の個人に加え、資産運用者やヘッジファンドなども含む「流動性の取り手」を母体とします。
- レバレッジ:スイスの銀行系という性格もあり、高レバ志向というより抑えめ・堅実な層が中心です。
- 扱う商品:主要な通貨ペアに金や原油などを加えた範囲が対象です。
- 比率の特徴:長短の偏りを指数(長短の差)で示し、一般の取り手と、銀行などの「出し手」を分けて見られます。
Myfxbook
特定の業者ではなく、世界中の個人が自分の口座を連携する大規模なコミュニティで、特定の国や業者に偏らないのが特徴です。
- 利用者層:世界中のMT4/MT5利用者で、自動売買(EA)や裁量の個人が幅広く口座を連携しています。特定の国・業者に依存しないぶん、業者横断の基準として使えます。
- 扱う商品:為替を中心に幅広いペアを網羅します。母体が多数の業者にまたがるため、レバレッジは一概に言えません。
- 比率の特徴:各利用者のポジション数とロット(数量)の両面から長短を算出します。更新が速く、データ取得用のAPIも用意されています。

FX Blue
こちらも業者ではなく、口座を連携した利用者を集計するタイプで、各利用者の「ネットの建玉」を1票として数えます。
- 利用者層:FX Blueに結果を公開している世界中のリアル口座(MT4/MT5のツール利用者)が母体で、特定の国には偏りません。
- 扱う商品:取引者数の多い人気銘柄が中心です。取引者が少ないペアは、意味のある比率が出ないため表示されないことがあります。
- 比率の特徴:各利用者のネットの建玉を1票として数えるため、両建てなどは相殺後の1方向として扱われます。ニュースに反応して急変しやすく、他社のツールの中に組み込まれて表示されることもあります。
AMarkets
2007年設立のオフショア系の社で、CIS(ロシア語圏)やアジア・中南米の個人が多く、非常に高いレバレッジが特徴です。
- 利用者層:ロシア・ウクライナ・カザフスタンなどのCIS圏を中心に、アジア・中南米・アフリカ・インドなど(米国は対象外)。多言語対応で新興国の個人に強い社です。
- レバレッジ:既定で非常に高く、業界でも高水準の部類です。アグレッシブに張る層に好まれ、重要指標の前後に引き下げる運用も行われます。
- 扱う商品:為替・株式・指数・商品・暗号資産など数百銘柄を、MT4/MT5で扱います。
- 比率の特徴:オープンポジションの長短比率から、買われすぎ・売られすぎの目安を示します。過去の推移を追える発展版(Kaimanと呼ばれる版)もあります。
楽天(楽天FX)
日本の個人投資家が母体で、「注文/建玉」「数量/人数」を切り替えられる細かさが特徴です。
- 利用者層:日本の個人投資家が中心です。日本の個人に特有の癖(押し目買いの傾向など)が表れやすいデータです。
- レバレッジ:日本の規制により個人向けのレバレッジ上限が定められており、主要国の中では低めです。高レバ志向の層ではありません。
- 扱う商品:国内で取り扱う通貨ペアが対象です。
- 比率の特徴:全ペアで売買比率を公開し、「注文(未約定のオーダー)/建玉(保有ポジション)」と「数量比率/人数比率」を切り替えられます。価格分布も確認でき、更新はWeb上のページが約1時間ごと、取引ツールでは約10分ごとです(閲覧は口座保有者向け)。

各社データを読み分ける手順
各社の比率は「全体感は横断平均でつかみ、社ごとの差は利用者層の違いで説明する」という順番で読むと、1社の数字に振り回されずに使えます。
- まず各社平均で全体の傾きを見る:上の一覧で、今どのペアがどちらに傾いているかを偏りの大きい順に確認します。
- 社ごとの差を利用者層で読む:同じペアでも傾きが違う場合、日本の個人なら楽天、CIS圏の高レバ層ならAMarkets、業者横断のコミュニティならMyfxbook、というように「誰が多い社か」を意識します。
- 数え方を揃えて比べる:人数ベースか数量ベースか、建玉か注文かを確認し、同じ土俵の数字どうしで比較します。
- 注文分布も活用する:OANDAや楽天のように価格帯ごとの注文が見える社では、ストップや指値の溜まりやすい価格を手がかりにします。
- 変化の方向を重視する:今の水準そのものより、傾きが強まっている途中か緩み始めているかを推移で追います。
- 他の分析と必ず組み合わせる:比率はあくまで一材料です。テクニカルやニュース・指標と突き合わせ、単独での判断は避けます。
